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2019年12月09日

仮託された未来図

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こんにちは、兵庫県伊丹市の西田鍼灸療院です。伊丹市内を中心に尼崎市・豊中市をはじめとする阪神・北摂地区の患者様のお身体の悩みを「根本改善」に導く「根本治療」の鍼灸を提供しております。

今回のオススメ本は
『ベーシックインカム』井上真偽(集英社)

本書は、近未来というSF的設定の世界で引き起こる人間ドラマをミステリアスに描くSFミステリを5編収録する。

以下、各編概略を記す。

・言の葉の子ら
日本語を学ぶために保育園で働くエレナが粗暴に振る舞う男子の行動の謎を解き明かしていく。
やがて、言の葉を用いて営まれる社会の人間不在という病巣が浮き彫りになる。
第70回日本推理作家協会賞短編部門候補作。

・存在しないゼロ
豪雪地帯に取り残された家族の中で、父親だけが奇妙な遺体となって発見される。
父親の遺書に残された[ゼロXゼロは、一にはならない]という言葉の謎を追ううちに明かされる衝撃の真実。
「本来ゼロにならないものを、ゼロにしてしまう」世界の悲劇を描く。

・もう一度君と
突然失踪した妻の理由を探るため、妻が耽溺していたVRの怪談の世界に飛び込んだ夫がたどり着いた結末。
”仮想“と”現実“が混在する世界のやるせなさを描いて秀逸。

・目に見えない愛情
視覚障害を持つ娘が、人工視覚手術を受け視覚を手に入れた時、目にした衝撃の真実。
最後で、普遍的テーマである「親子ドラマ」のエッセンスを効かせるところは見事!

・ベーシックインカム
全国民に最低限の生活が出来るお金を支給する政策・ベーシックインカム。
この政策が実施されれば、お金目的の犯罪が減ると主張する大学教授の預金通帳が盗まれる。
その謎を追って展開される教授と教え子である小説家との丁々発止の議論が思わぬところにたどり着く。
収録作中最もミステリ色の濃い佳篇である。

最後に登場人物である小説家に仮託して著者の想いが綴られる。
「逆に外れてほしい。怨嗟に満ちた私の小説など、悪い冗談だと言わんばかりの未来であってほしい。
私は今、夢想する。AIが人間と寄り添い、遺伝子工学が人々に遍(あまね)く恩恵を与える社会を。VRが他者への理解をめ、癒し、強化技術が人の諦めを希望に変える社会を。
そこでは、技術が人をを写す鏡となり、人が人を知り、あらゆる価値感が正しく再構築される。人々は人々の糧を稼ぐ無益な労働から解放され、その余裕ある暮らしの中、初めて真の隣人と向き合い、語らい、共に親しく手を取り合って、より困難な人間の課題に真正面から立ち向かうー。
願わくば、そんな未来が訪れんことを」

本書の遺伝子操作、AI、人間強化、VR、ベーシックインカムなど先進性に富むテーマを糸口に提起される問題は、今を生きる我々にも決して無関係ではあるまい。

さればこそ、若者の夢を奪わないための処方箋を今から用意し、希望に満ちた明るい未来図を描かねばならないのである。




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