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2021年10月11日

「日本の熱い時代」に散った異才の作品集

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こんにちは、兵庫県伊丹市の西田鍼灸療院です。伊丹市内を中心に尼崎市・豊中市を始めとする阪神・北摂地区の患者様のお身体の悩みを「根本改善」に導く「根本治療」の鍼灸を提供しております。

 

今般、刊行された『楠勝平コレクション山岸涼子と読む』(ちくま文庫)が素晴らしい!

 

どんなに優れた作家でも、何十年も放置されれば忘れられるしかない。

楠勝平という格別に才能あるマンガ家も、もはや限られた範囲の好事家の記憶にとどまるに過ぎないに違いない。

 

楠勝平は、1944年、東京生まれ。

中学生の時に、心臓弁膜症を発症、以来、この病気は楠の人生に付いてまわることとなる。

白土三平、平田弘志、さいとう・たかをといった貸本マンガの人気作家たちに熱を上げ、60年には早くも、弱冠15歳でデビュー、61年には、白土三平のアシスタントに。

64年からは、創刊されたばかりの「ガロ」を中心に旺盛な創作活動に入る。

 

1974年、病死。享年30歳という若さであった。

 

生前には、単行本は出していない。

没後、75、78、01年のわずかに三度作品集が出た切りで、それからふっつりと楠勝平のマンガを 目にすることはなくなった。

 

本書は、閨秀作家・山岸涼子により20年ぶり編まれた一冊で、楠作品の内実を存分に味わうことができる。

 

何しろ密度が濃い。

時代ものでも、現代ものでも、これが20代の作品かと思わせるほどに描写が静謐で、落ち着きがあり、およそケレンが感じられない。

これは、あまり作家自身の現実に引きつけたくはないが、やはり死というものが常に間近あったために違いない。

例えば、仇討ちによって、父と娘の貧しくも穏やかな暮らしが苛酷な結末を迎える「暮れ六つ」という作品では、この世への、人生への、生命への明らかな諦念が作品の基調として強打される。

 

難解な作品は一つもない。

現在の読み手がそれぞれの生活実感を下敷きに読んでもしっとりと腑に落ち、決して古びていない。

 

楠勝平の創作期間である6、70年代は、学園闘争の高揚が広く社会を覆い、高度成長というマグマが渦巻く、かつてない「日本の熱い時代」であった。

 

コロナ禍の今だからこそ、楠勝平作品を通してかつての「日本の熱い時代」に触れることは意義がある!

 

本書の時宜を得た刊行を心より悦びたい!

 

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