2021年09月25日
“首ポキ(首鳴らし)”に注意
ブログ

テレワークがすっかり定着したコロナ禍、長時間のデスクワークを余儀なくされ、運動不足に陥る人々を悩ませているのが、「国民病」ともいえる肩凝りだ。
強い症状を訴えて当院を来診される患者様の中には、わずかでも症状を和らげようと、頻繁に首をポキポキ鳴らしている方が少なからずいる。
この首の関節を鳴らす行為を当院は「首ポキ」と呼び、百害あって一利なしの行為だと思っている!
この“首鳴らし”は想像以上に首に衝撃を与えていて、強度と頻度によっては生死に関わる事態の遠因となる可能性すらある、と警鐘を鳴らしたい。
生死に関わるとは物騒な言い方だと思われる方も多いと思う。
確かに首の骨が折れたり、首の血管が千切れたりするような衝撃が普通の首ポキでかかることはない。
なら、なぜ首を鳴らすだけで死ぬ可能性が……。
このことを順を追って説明する。
少し専門的になるが、お付き合い頂きたい。
まず、首ポキでなぜあのような音が鳴るかという正確な原因はわかっていないが、有力な仮説はある。
首に限らず関節は、骨と骨が「関節包」というという袋のようなものに覆われていて、そこには「関節腔」という隙間が存在し、関節腔は普段は「滑液」という一種の潤滑油で満たされている。
ここで、普段は動かさない範囲まで関節を動かすと関節腔の容積が増し、陰圧が発生する。
そして陰圧が発生すると、滑液に溶けていた窒素や二酸化炭素などの気泡する。
しかしその気泡はいつまでもあるわけではなく、すぐに消滅する。
その気泡が消える時に音が「パンッ」と発生する、これが首ポキの有力な仮説である。
音の原因が気泡かどうかは証明されていないものの、いずれにせよ、日常生活ではあり得ない範囲まで首の関節を動かした時に、首ポキが起きることは間違いない。
首に大きな力を加え生命に危険が及ぶケースとしては、主に2つのパターンがある。
一つは延髄損傷、もう一つは頸髄損傷。
共に外部からの強い力で頚椎が脱臼骨折し、その骨が延髄や頸髄を破壊することで発生する症状であり、損傷の度合いによっては死に至る。
ただここからがポイントで、そうなるには交通事故や極限状態でのスポーツなど、日時生活では計り知れない衝撃が加わった時で、自分の力では頚椎を脱臼骨折するほど首の関節を動かすことはまずできない。
先程、「普通の“首ポキ”ではそこまでの衝撃はかからない」と書いたのはそういう意味である。
逆に言えば、“普通でない首ポキ”なら事故の可能性もあるということ。
例えば、第三者によって不意を突く形で急激に首を動かす首ポキは危険、と当院は考えている!
人間は身構えている時は大抵の衝撃に対応できるが、予想できない衝撃には適切な反応ができず、予想以上のダメージが加わることが多い。
だから、同じ首ポキでも非常に無防備な状態で受ける第三者による常軌を逸した急激な首ポキでは、事故につながる可能性がゼロではない、と当院は考えている!
首ポキの怖さはそれだけに留まらない。
自分でやる首ポキでも高頻度になれば、体に深刻な影響を及ぼしかねない。
関節内は非常にデリケートで、高頻度で首ポキが起こり続けると、頚椎の脱臼骨折まで行かなくても、やはり周辺の組織の損傷を起こす可能性は充分にある。
影響を受ける周辺組織を具体的に言えば椎骨動脈で、この血管は首の骨(第1から第6頚椎)を貫いて脳に至り、脳に血液という栄養を運ぶ極めて大事な血管である。
高頻度の首ポキの怖さは血管自体ではなく、血管の内部を傷つける恐れがあること。
傷ついた部位が変性すると動脈硬化が促進され、更に血栓が形成されやすくなる。
椎骨動脈にできた血栓が何らかの影響で脳に飛んだ場合、塞栓となり、脳梗塞が発生する可能性がある!
まとめると、首ポキが起こること自体は異常ではないし、少なくとも自分で実施する首ポキが直ちに命の危機につながることは考えづらい。しかし、第三者による常軌を逸した施術や、長期にわたり常習的にやっていると、中枢神経を損傷したり、循環器領域での生命を脅かす疾患の遠因なったりすることもあるということである。
したがって、このような危険性を内包する行為である“首ポキ”行うべきではないし、常習化している方には直ちに止めていただきたいと思う!
首ポキによって首の不快な症状が消えるならまだしも、そうは決してならない。
一瞬、楽になったように感じるのは、音が鳴ることによる心理作用によるものと思われ、当院の考えでは、中枢神経を負傷するリスクを負ってまで首ポキをするメリットは一切ない。
その点、鍼灸は体に負担をかけないソフトな施術法と言える。
鍼灸は安全面からも強くおすすめできる施術法である!
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