2020年06月14日
「皆働社会」実現に向けた究極の人間幸福論
ブログ
こんにちは、兵庫県伊丹市の西田鍼灸療院です。伊丹市内を中心に尼崎市・豊中市をはじめとする阪神・北摂地区の患者様のお身体の悩みを「根本改善」に導く「根本治療」の鍼灸を提供しております。
今回、強くお勧めしたい本は『虹色のチョーク 働く幸せを実現した町工場の奇跡』小松成美(幻冬舎文庫)
現在我が国では、障害者雇用促進法により法定雇用率が定められている。
法定雇用率とは、民間企業や国・地方公共団体などに義務付けられた全雇用者に占める身体・知的・精神障害者の雇用割合の事で、民間企業2・2%、国・地方公共団体2・5%%都道府県等の教育委員会2・4%となっている。
最新の厚労省障害者雇用状況の集計結果(令和元年12月25日発表)によると、法定雇用率達成企業は48%である。
つまり、半数以上の民間企業が未達成ということになる。
そんな中、60年以上に渡り知的障害者雇用に取り組み、70%の雇用率を達成している会社が
本書の舞台「日本理化学工業」である。
「日本理化学工業」は川崎市にあるチョーク製造メーカーで国内シェア7割(2020年2月時点)を誇り、高い障害者雇用との両立を達成した稀有の存在。
本書は、この取り組みを始めた会長・大山善弘やその息子で社長の隆広や雇用障害者とその家族などへのインタビューを中心に5年の歳月をかけて丹念に取材した魂のノンフィクションである。
本書の読みどころは何と言っても主人公・大山善弘の口から発せられる含蓄ある言葉の数々であろう。
「会社は、売上を上げるためだけに、利益を上げるためだけに存在しているのではない。人は人に必要とされてこそ、幸せを感じられる。楽しい遣り甲斐があると感じられる仕事があってこそ、人は誇りを持てる。ここで働く皆が幸福を感じられる会社にしていきたい。そのために私は存在している」
「人は仕事をすることで、人の役に立つ。褒められて、必要とされるからこそ、生きている喜びを感じることができる。家や施設で保護されているだけでは、こうした喜びを感じることはできない。職業を持って必要とされる喜びを知った彼らは、さらに懸命に働いてくれる。そして、その彼らを毎日見つめてきた私こそ、彼らから働く幸せ、人の役に立つ幸せを教えられた。彼らに導かれたこの感謝こそ、私が日本理化学工業を続けて原動力である」
人間の幸せは働くことによって得られると信じる大山善弘は、日本国憲法に謳う「国民の幸福追求の尊重」と「国民の勤労の権利と義務」を引き合いに出して、重度障害者だから福祉施設で一生面倒をみてもらえばいいという訳ではなく、目指すべきは単に健常者が障害者に寄り添って生きる「共生社会」ではなく、「皆働社会」なのだという気付きを得て、「皆働社会」の実現を経営理念の一つにした。
「皆働社会」は、誰もが得をする、幸せになれる社会。
国や企業は節税に、働く障害者は経済的自立と労働の喜びを得る、その結果、障害者の家族は様々な心配から解放されて安心でき、福祉施設は負担の軽減になる。
このように、国、企業、障害者、その家族、福祉施設で働く人、皆が幸せになれる“五方一両得”の社会の実現を、大山善弘は軽やかに訴え続けてきた。
その実現に向けこの会社では、障害者を前に「どうして出来ないんだ」と考えるのではなく、常に「どうすれば出来るのか」を考え、それぞれの理解力に合わせた工夫が施されている。
その人の持つ理解力に合わせて作業工程を設計し、温かい目で見守れば、彼らは、健常者と変わらない能力を発揮する。さらに、褒められれば喜びを感じ、向上心を持つ。
本書の中で障害者の一人は次のように紹介される。
「彼がうちのエース。彼の作業の緻密さ、正確さが不可欠で、本当に頼もしい存在であり、その熱心さと集中力には頭が下がる」と。
社員は皆、「障害者のために何かやってあげている」とか「面倒を見てあげる」という意識はなく、逆に誰もが、彼らから働く尊さ喜びを教えてもらっている。
文字通り、同じ会社で働く同僚たちには、その枠を超え、家族や親友といった思いやりが窺える。
長年勤めている社員はもちろん、勤務して数年の若い社員達にも、知的障害者雇用をスタートした頃から育まれた絆が受け継がれている。
本書のもう一つの読みどころは、単なる企業記に収まりきらない「家族の物語」であるところ!
入社当初、一途に障害者雇用促進を目指す父親に疑問と反発を抱いていた息子・隆広が、障害者と深く時間を共にするうちにその思いを改め、父親を真に理解し、その事業と哲学を引き継ぎ、未来へと希望の志を踏襲していく姿が清々しく描かれる。
障害者を持った家族が抱え込まざるを得ない不安や葛藤が丁寧に描出された後、生涯雇用を保障するこの会社で働くことによって安心を得た家族が、障害者本人共々この会社で働ける喜びを率直に語る。
特にこの会社が初めて雇用した知的障害者の一人で、既に定年退職している女性が「日本理化学工業」への変わらぬ感謝を流涙と共に語る場面は象徴的である。
「 大好きな会社。大好きな大山会長。今も、働いているのと、おんなじ気持ち」
大山善弘が知的障害者雇用に取り組むきっかけは、偶然知己を得た禅僧の「人間の究極の四つの幸せ」の話だった。
「大山さん、人に愛されることは、施設にいても家にいても、感じることができるでしょう。けれど、人に褒められ、役に立ち、必要とされることは、働くことで得られるのですよ。つまり、その人達は働くことによって、幸せを感じているのです。施設にいてゆっくり過ごすことが幸せではないんですよ」と。
この話を聞いた瞬間から世の中の光景も映る色も変わった大山は、「この先チョーク屋では大きな会社になれないのなら、一人でも多くの障害者を雇う会社にしよう」と決意した。
この教えは今、大山の言葉として工場敷地内に置かれてた彫像「働く幸せの像」の台に刻まれている。
働く幸せ
導師は人間の究極の幸せは、人に愛されること、人にほめられること、人の役に立つこと、人から必要とされること、の四つと云われた。
働くことによって愛以外の三つの幸せは得られるのだ。
私はその愛までも得られると思う。
現在、世を席捲しているコロナ禍は、人々の価値観や生活スタイルに大きな変化をもたらす。
その一つはオンライン化の波で、在宅勤務や授業、遠隔医療などの標準化は益々進むであろう。
それは利便性に富んだ、衛生的で安全な社会の実現に貢献し、人類に福音をもたらす一方、副作用も覚悟せねばなるまい。
人間疎外と格差の拡大が生み出した人心の荒廃がコミュニティの崩壊を促し、排他的で不寛容に溢れた社会の到来は、障害者にとって生きにくい時代でもある。
その意味で大山善弘が提唱する「皆働社会」の実現は、並大抵ではない。
しかし「働く幸せ」に基点を置いた究極の人間幸福論である本書の読書体験が、その解決への糸口を見い出してくれると信じたい!
アフターコロナに向け、今読むべき書として強く推薦する所以である。
今回、強くお勧めしたい本は『虹色のチョーク 働く幸せを実現した町工場の奇跡』小松成美(幻冬舎文庫)
現在我が国では、障害者雇用促進法により法定雇用率が定められている。
法定雇用率とは、民間企業や国・地方公共団体などに義務付けられた全雇用者に占める身体・知的・精神障害者の雇用割合の事で、民間企業2・2%、国・地方公共団体2・5%%都道府県等の教育委員会2・4%となっている。
最新の厚労省障害者雇用状況の集計結果(令和元年12月25日発表)によると、法定雇用率達成企業は48%である。
つまり、半数以上の民間企業が未達成ということになる。
そんな中、60年以上に渡り知的障害者雇用に取り組み、70%の雇用率を達成している会社が
本書の舞台「日本理化学工業」である。
「日本理化学工業」は川崎市にあるチョーク製造メーカーで国内シェア7割(2020年2月時点)を誇り、高い障害者雇用との両立を達成した稀有の存在。
本書は、この取り組みを始めた会長・大山善弘やその息子で社長の隆広や雇用障害者とその家族などへのインタビューを中心に5年の歳月をかけて丹念に取材した魂のノンフィクションである。
本書の読みどころは何と言っても主人公・大山善弘の口から発せられる含蓄ある言葉の数々であろう。
「会社は、売上を上げるためだけに、利益を上げるためだけに存在しているのではない。人は人に必要とされてこそ、幸せを感じられる。楽しい遣り甲斐があると感じられる仕事があってこそ、人は誇りを持てる。ここで働く皆が幸福を感じられる会社にしていきたい。そのために私は存在している」
「人は仕事をすることで、人の役に立つ。褒められて、必要とされるからこそ、生きている喜びを感じることができる。家や施設で保護されているだけでは、こうした喜びを感じることはできない。職業を持って必要とされる喜びを知った彼らは、さらに懸命に働いてくれる。そして、その彼らを毎日見つめてきた私こそ、彼らから働く幸せ、人の役に立つ幸せを教えられた。彼らに導かれたこの感謝こそ、私が日本理化学工業を続けて原動力である」
人間の幸せは働くことによって得られると信じる大山善弘は、日本国憲法に謳う「国民の幸福追求の尊重」と「国民の勤労の権利と義務」を引き合いに出して、重度障害者だから福祉施設で一生面倒をみてもらえばいいという訳ではなく、目指すべきは単に健常者が障害者に寄り添って生きる「共生社会」ではなく、「皆働社会」なのだという気付きを得て、「皆働社会」の実現を経営理念の一つにした。
「皆働社会」は、誰もが得をする、幸せになれる社会。
国や企業は節税に、働く障害者は経済的自立と労働の喜びを得る、その結果、障害者の家族は様々な心配から解放されて安心でき、福祉施設は負担の軽減になる。
このように、国、企業、障害者、その家族、福祉施設で働く人、皆が幸せになれる“五方一両得”の社会の実現を、大山善弘は軽やかに訴え続けてきた。
その実現に向けこの会社では、障害者を前に「どうして出来ないんだ」と考えるのではなく、常に「どうすれば出来るのか」を考え、それぞれの理解力に合わせた工夫が施されている。
その人の持つ理解力に合わせて作業工程を設計し、温かい目で見守れば、彼らは、健常者と変わらない能力を発揮する。さらに、褒められれば喜びを感じ、向上心を持つ。
本書の中で障害者の一人は次のように紹介される。
「彼がうちのエース。彼の作業の緻密さ、正確さが不可欠で、本当に頼もしい存在であり、その熱心さと集中力には頭が下がる」と。
社員は皆、「障害者のために何かやってあげている」とか「面倒を見てあげる」という意識はなく、逆に誰もが、彼らから働く尊さ喜びを教えてもらっている。
文字通り、同じ会社で働く同僚たちには、その枠を超え、家族や親友といった思いやりが窺える。
長年勤めている社員はもちろん、勤務して数年の若い社員達にも、知的障害者雇用をスタートした頃から育まれた絆が受け継がれている。
本書のもう一つの読みどころは、単なる企業記に収まりきらない「家族の物語」であるところ!
入社当初、一途に障害者雇用促進を目指す父親に疑問と反発を抱いていた息子・隆広が、障害者と深く時間を共にするうちにその思いを改め、父親を真に理解し、その事業と哲学を引き継ぎ、未来へと希望の志を踏襲していく姿が清々しく描かれる。
障害者を持った家族が抱え込まざるを得ない不安や葛藤が丁寧に描出された後、生涯雇用を保障するこの会社で働くことによって安心を得た家族が、障害者本人共々この会社で働ける喜びを率直に語る。
特にこの会社が初めて雇用した知的障害者の一人で、既に定年退職している女性が「日本理化学工業」への変わらぬ感謝を流涙と共に語る場面は象徴的である。
「 大好きな会社。大好きな大山会長。今も、働いているのと、おんなじ気持ち」
大山善弘が知的障害者雇用に取り組むきっかけは、偶然知己を得た禅僧の「人間の究極の四つの幸せ」の話だった。
「大山さん、人に愛されることは、施設にいても家にいても、感じることができるでしょう。けれど、人に褒められ、役に立ち、必要とされることは、働くことで得られるのですよ。つまり、その人達は働くことによって、幸せを感じているのです。施設にいてゆっくり過ごすことが幸せではないんですよ」と。
この話を聞いた瞬間から世の中の光景も映る色も変わった大山は、「この先チョーク屋では大きな会社になれないのなら、一人でも多くの障害者を雇う会社にしよう」と決意した。
この教えは今、大山の言葉として工場敷地内に置かれてた彫像「働く幸せの像」の台に刻まれている。
働く幸せ
導師は人間の究極の幸せは、人に愛されること、人にほめられること、人の役に立つこと、人から必要とされること、の四つと云われた。
働くことによって愛以外の三つの幸せは得られるのだ。
私はその愛までも得られると思う。
現在、世を席捲しているコロナ禍は、人々の価値観や生活スタイルに大きな変化をもたらす。
その一つはオンライン化の波で、在宅勤務や授業、遠隔医療などの標準化は益々進むであろう。
それは利便性に富んだ、衛生的で安全な社会の実現に貢献し、人類に福音をもたらす一方、副作用も覚悟せねばなるまい。
人間疎外と格差の拡大が生み出した人心の荒廃がコミュニティの崩壊を促し、排他的で不寛容に溢れた社会の到来は、障害者にとって生きにくい時代でもある。
その意味で大山善弘が提唱する「皆働社会」の実現は、並大抵ではない。
しかし「働く幸せ」に基点を置いた究極の人間幸福論である本書の読書体験が、その解決への糸口を見い出してくれると信じたい!
アフターコロナに向け、今読むべき書として強く推薦する所以である。
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