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2020年04月30日

「翻訳者」の腕の冴え

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こんにちは、兵庫県伊丹市の西田鍼灸療院です。伊丹市内を中心に尼崎市・豊中市をはじめとする阪神・北摂地区の患者様のお身体の悩みを「根本改善」に導く「根本治療」の鍼灸を提供しております。

今回は、『サンセット・パーク』ポール・オースター 柴田元幸訳(新潮社)を取り上げる。

長年海外小説に耽溺してきた者は、時に作者名よりも先に翻訳者の名に目が行く。

優れた海外小説に親しむためには、秀でた紹介者たるべき翻訳者の存在は不可欠であり、その実力如何によって作品の滋味が左右される。

そんな中、柴田元幸は当院が全幅の信頼を寄せる翻訳名人である。

思えば当院のポール・オースター初読作品は『ムーンパレス』であったが、この邂逅も柴田元幸への信頼を無くしては有り得なかった。

この時の奇想天外なストーリー全体に横溢する躍動感に身を任せ一気呵成に読み切る動の快感と、その後に訪れる深く静かに染み入る余韻という対極を一冊のうちに味わうという得難い読書体験が、その後、ポール・オースターの新作発刊を待ちかねて読み継ぐ熱心なファンになるきっかけとなった

この度、待望久しい新作『サンセットパーク』が出た。

本作は、訳あってニューヨークのサンセットパークの廃屋に不法居住する主人公の若者とそれを取り巻く家族、友人を各章立てに描いた群像劇である。

登場人物が、過去に犯した過ちを心の闇として抱え、その贖罪の途上で現在を見直し、未来の救済と再生を探る筋立てはオースター作品の定番であり、本作もそれに違わない。

相変わらず柴田元幸の仕事は丁寧で、オースターの描く人物毎の陰影を見事に描き分け表出する腕の冴えが、作品の魅力を一層かきたてる。

本作は、過去の作品に比べて読みやすい印象を受けた故、ポール・オースター入門書として強くお勧めしたい。

 

 

 

 

 

 

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