2019年12月30日
生きるとは、自分の物語を作ること
ブログ
こんにちは、兵庫県伊丹市の西田鍼灸療院です。伊丹市内を中心に尼崎市・豊中市をはじめとする阪神・北摂地区の患者様のお身体の悩みを「根本改善」に導く「根本治療」の鍼灸を提供しております。
今年は、小川洋子の短編集を二冊(『小箱』、『約束された移動』)読むことができた。
デビュー時からのファンである当院にとって、何よりの収穫であった。
この二冊にインスパイアされ、小川と臨床心理学者河合隼雄との対談二本をまとめた『生きるとは、自分の物語を作ること』を再読した。
第一談は、『魂のあるところ』
河合隼雄はユング派心理学を日本にいち早く紹介、啓蒙に努めた斯界の泰斗であり、生涯をカウンセラーとして「魂」の救済に捧げた人物である。
一方、小川洋子も世の森羅万象に内包する「魂」が静謐な激しさで相互交流する時に発露する不思議を描いて人後に落ちない「魂」の小説家である。
これは「魂」の取り扱いに長けた専門家二人が名作[博士の愛した数式]を手がかりに、互いの「魂」を触れ合わせて成ったもので、正に文中紹介される河合の言葉「魂と魂を触れ合わせるような人間関係を作ろうというとき、大事なのは、お互い限りある人生なんだ、必ず死ぬ者同士なんだという一点を共有しあっていること」の実践の「場」になっている。
対談後しばらくして、河合隼雄はこの世を去る。
それだけにこの言葉が胸に深く刺さる。
河合隼雄の「魂」が心に響くのである。
第二談は、本書の表題にもなっている[生きるとは、自分の物語を作ること]
冒頭、小川洋子はなぜ小説を書くのかについて、「人は生きていくうえで、難しい現実をどうやって受け入れていくかということに直面した時に、それをありのままの形では到底受け入れがたいので、自分の心の形に合うように、その人なりに現実を物語化して記憶化していくという作業を、必ずやっていると思う。小説で一人の人間を表現しようとするとき、作家は、その人がそれまで積み重ねてきた記憶を、言葉の形、お話の形で取り出して、再確認するために書いているような気がする」と表現し、一方臨床心理の仕事は、「自分なりの物語を作れない人を、作れるように手助けすることである」と表現する。
その上で、「人々の物語作りの手助けをする専門家である心理カウンセラーの河合と意識的に物語を作っている作家の自分との間には、どこか通じるものがあり、二人で物語についていろいろ語り合えたら面白いと考えた」と対談の動機を語る。
実際この対談では小川洋子という最適の聞き役を得て、「場」を提供された患者が自分の物語を発見し、自分の物語を生きていく様子が、心理カウンセラー河合隼雄によって鮮やかに詳述される。
中でも、患者が治っていくときには、何か「ものすごくうまいこと」が起こる、との指摘に深く首肯する。
このことは、偶然がただうまく重なり合っただけ、また、この偶然を引き寄せるのが治療家の腕だと断じる向きに、河合は「自分は何もしていない」ときっぱり否定する。
その偶然というのは、患者が起こしているもので、そういう「場」というものがあり、都合のいい偶然が起こりそうな時に、そんなこと絶対起こらんと先に否定しているものには起こらない、と説く。
あくまでも、「偶然」や「うまいこと」は患者の内側から起こってくる、との考えを貫く。
もちろん、治療家はその治る「場」に患者を導き、必要な空気を、水を供給する役割を担うのだが、その理がわからないうちは、どうしても治そうと思って張り切るから疲れる上に、結果も良くない。しかし、そういう時を越して来ないと駄目だと強調する。
つまり、熟練の治療家の能力が最大限に発揮されればされるほど、表面上は、まるで患者自ら「偶然」治ったかのように見える「必然」が起こるのだと当院は理解する。
合わせて、治療家として専門の技術を持つ河合が、治癒の過程に「偶然」という曖昧で、本来コントロール不能なはずの現象を持ち込んでいることに潔さを感じるのは、当院だけではあるまい。
当院も河合ほどではないが、これまで患者様に「うまいこと」が起こり、治る「場」に立ち会う機会を多く得た。
このことは、当院の治療家としての何物にも代え難い財産であり、冥利に尽きる果報である。
思えば、「根本改善」に導く「根本治療」の要諦は、施術が引き起こす化学反応の感知をきっかけに患者に魂の救済を働きかけることである。
「生きるとは、自分の物語を生きること」とは、本書に出会った「偶然」を「必然」に変えること。
患者様の治癒に向けた物語の発見と作成のお手伝いをすることこそが当院の「自分の物語を生きること」であり、「自分の物語を生かす(活かす)こと」に繋がる道だと確信する。
最後に強くアナウンスしたい!
魂の専門家二人の邂逅と、それに巡り会えた当院の僥倖そのものが「うまいこと」が起きた「偶然」であり、それを患者様の「根本改善」に導く「根本治療」に活かし「必然」に転化させることが、当院にとっての「自分の物語を生きること」であると………。
今年は、小川洋子の短編集を二冊(『小箱』、『約束された移動』)読むことができた。
デビュー時からのファンである当院にとって、何よりの収穫であった。
この二冊にインスパイアされ、小川と臨床心理学者河合隼雄との対談二本をまとめた『生きるとは、自分の物語を作ること』を再読した。
第一談は、『魂のあるところ』
河合隼雄はユング派心理学を日本にいち早く紹介、啓蒙に努めた斯界の泰斗であり、生涯をカウンセラーとして「魂」の救済に捧げた人物である。
一方、小川洋子も世の森羅万象に内包する「魂」が静謐な激しさで相互交流する時に発露する不思議を描いて人後に落ちない「魂」の小説家である。
これは「魂」の取り扱いに長けた専門家二人が名作[博士の愛した数式]を手がかりに、互いの「魂」を触れ合わせて成ったもので、正に文中紹介される河合の言葉「魂と魂を触れ合わせるような人間関係を作ろうというとき、大事なのは、お互い限りある人生なんだ、必ず死ぬ者同士なんだという一点を共有しあっていること」の実践の「場」になっている。
対談後しばらくして、河合隼雄はこの世を去る。
それだけにこの言葉が胸に深く刺さる。
河合隼雄の「魂」が心に響くのである。
第二談は、本書の表題にもなっている[生きるとは、自分の物語を作ること]
冒頭、小川洋子はなぜ小説を書くのかについて、「人は生きていくうえで、難しい現実をどうやって受け入れていくかということに直面した時に、それをありのままの形では到底受け入れがたいので、自分の心の形に合うように、その人なりに現実を物語化して記憶化していくという作業を、必ずやっていると思う。小説で一人の人間を表現しようとするとき、作家は、その人がそれまで積み重ねてきた記憶を、言葉の形、お話の形で取り出して、再確認するために書いているような気がする」と表現し、一方臨床心理の仕事は、「自分なりの物語を作れない人を、作れるように手助けすることである」と表現する。
その上で、「人々の物語作りの手助けをする専門家である心理カウンセラーの河合と意識的に物語を作っている作家の自分との間には、どこか通じるものがあり、二人で物語についていろいろ語り合えたら面白いと考えた」と対談の動機を語る。
実際この対談では小川洋子という最適の聞き役を得て、「場」を提供された患者が自分の物語を発見し、自分の物語を生きていく様子が、心理カウンセラー河合隼雄によって鮮やかに詳述される。
中でも、患者が治っていくときには、何か「ものすごくうまいこと」が起こる、との指摘に深く首肯する。
このことは、偶然がただうまく重なり合っただけ、また、この偶然を引き寄せるのが治療家の腕だと断じる向きに、河合は「自分は何もしていない」ときっぱり否定する。
その偶然というのは、患者が起こしているもので、そういう「場」というものがあり、都合のいい偶然が起こりそうな時に、そんなこと絶対起こらんと先に否定しているものには起こらない、と説く。
あくまでも、「偶然」や「うまいこと」は患者の内側から起こってくる、との考えを貫く。
もちろん、治療家はその治る「場」に患者を導き、必要な空気を、水を供給する役割を担うのだが、その理がわからないうちは、どうしても治そうと思って張り切るから疲れる上に、結果も良くない。しかし、そういう時を越して来ないと駄目だと強調する。
つまり、熟練の治療家の能力が最大限に発揮されればされるほど、表面上は、まるで患者自ら「偶然」治ったかのように見える「必然」が起こるのだと当院は理解する。
合わせて、治療家として専門の技術を持つ河合が、治癒の過程に「偶然」という曖昧で、本来コントロール不能なはずの現象を持ち込んでいることに潔さを感じるのは、当院だけではあるまい。
当院も河合ほどではないが、これまで患者様に「うまいこと」が起こり、治る「場」に立ち会う機会を多く得た。
このことは、当院の治療家としての何物にも代え難い財産であり、冥利に尽きる果報である。
思えば、「根本改善」に導く「根本治療」の要諦は、施術が引き起こす化学反応の感知をきっかけに患者に魂の救済を働きかけることである。
「生きるとは、自分の物語を生きること」とは、本書に出会った「偶然」を「必然」に変えること。
患者様の治癒に向けた物語の発見と作成のお手伝いをすることこそが当院の「自分の物語を生きること」であり、「自分の物語を生かす(活かす)こと」に繋がる道だと確信する。
最後に強くアナウンスしたい!
魂の専門家二人の邂逅と、それに巡り会えた当院の僥倖そのものが「うまいこと」が起きた「偶然」であり、それを患者様の「根本改善」に導く「根本治療」に活かし「必然」に転化させることが、当院にとっての「自分の物語を生きること」であると………。
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