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2019年12月18日

反意的読書法

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こんにちは、兵庫県伊丹市の西田鍼灸療院です。伊丹市内を中心に尼崎市・豊中市をはじめとする阪神・北摂地区の患者様にお身体の悩みを「根本改善」に導く「根本治療」の鍼灸を提供しております。

本年11月、吉川一義による『失われた時を求めて 全14巻』マルセル・プルースト(岩波文庫)の個人全訳が完結した。

2010年11月の第1巻の刊行から数えて、丸9年をかけての壮挙である。

本作は、多くの人が挫折を余儀なくされた難物である。

とにかく長い!おまけに話の流れが冗長で、すこぶる退屈であるとの声が上がる。

確かにこの小説を支配するのは、まず、現代の都市生活とは全く異なった時間のリズムである。
例えば作中、主人公がベッドの中で一瞬味わう聴覚や嗅覚、恋人の差し入れる舌の感触などが、永続的な官能の戯れとして精密に表現されていくが、そこに流れる時間は実に緩やかである。

それ故にこの小説を読むには、小説に書かれた十九世紀末フランスの小都市に住む主人公と同じように、読み手自身もじんわりと時間を失速させていくように読み進めていくことが肝要である。

ゆっくり、ゆっくり時間を失いながら読む。この小説を読む快楽はそこにある。

まさに、”失われた時”を求めない反意的読書法こそが、この小説を読む最適解であろう。

本院の場合を言えば、訳者に足並みを揃えて9年かけての読了である。

訳した人も偉いが、読んだ人も偉い。

そう胸を張りたくなるほど時間を失ったのがうれしいのである。

”失われた時“が愛おしいのである。



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