2019年10月09日
人間という「きえもの」
ブログ

燈火親しむ秋。今回、オススメする本は
『きえもの』 九螺さらら (新潮社)
九螺(くら)ささらは、独特の切り口で奇想短歌を詠むひと。
デビュー作『神様の住所』でドゥマゴ賞を受賞した斯界の新星が、第2作を上梓した。
タイトルは『きえもの』
「きえもの」とは「消えもの」のこと。
芸能分野(舞台演劇・映画・テレビの製作)の専門用語及び業界用語で、使うとすぐに消耗が始まり無くなる小道具。
その結果、使用回数が一回に限られている種類のもの。
著者は、「消えもの」の説明文を何度も読み、ある真実に気付く。
これは、魂の乗り物である肉体について書かれたものではないか!
我々は気付いた時には既にいて、どこからどうしてここに来たかもわからずどうしようもなく有り物で、有り物は消え物となる宿命を内包してそこにいるしかない種類のものだ!
この世はあの世を含んでいるし、あるはないを含んでいる。消えるとは、真逆世界への魂の移動である!
著者は説く、常にきえもの前夜を生きるありものたちが、「ある」と「ない」、「現実」と「夢」、「わかる」と「わからない」などの対概念の境界線を踏み越える瞬間を描いた、と。
本書は、究極の対概念である「始まり」と「終わり」の「生」と「死」、「ありもの」として「この世」に生き、「きえもの」として「あの世」に行く人間の宿命を、きえもの=消えものである食べ物に仮託し紡いだ短歌と散文から成る掌編を70編収める。
構成は各章、始めと終わりに短歌を置き、散文を挟んだサンドイッチ形式。
奇才・九螺ささらが哲学をスパイスに不思議風味に調理した”言葉のサンドイッチ” を存分に賞味していただきたい。
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